新型インフルエンザ対策に対するエビデンスのまとめ Review of pandemic influenza preparedness and control measures 厚生労働科学研究補助金「新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業」

各国における新型インフルエンザ対策

英国

行動計画の基本方針について
インフルエンザパンデミックに備え、政府は1)出来る限りの市民や旅行者を、感染による重症化や死亡から守る、2)パンデミックによって引き起こされる健康被害に対して備えておく、3)他国と協力して、パンデミックウイルスの検出や蔓延の阻止、あるいは拡散するスピードを遅らせるようにつとめる、4)社会的、経済的な影響を最小限に押さえる、5)インフルエンザ以外の疾病に対する医療を維持しながら、インフルエンザとその合併症に対して適切な治療を提供できる医療体制を適応できるようにする(※1 - p.8 Strategic object)。
被害想定推計項目と推計値
過去のパンデミックに関する経験や数理解析および季節性インフルエンザに関連するリスクから考慮すると、15週に及ぶことが予想される第一波、第二波のパンデミックの期間中に国民の半数がインフルエンザの症状に罹患するであろうと考えられている。
効果的な治療法がない場合では、罹患した人々のうち2.5%がインフルエンザが原因で死亡すると考えられる(※2 - p.14 Planning assumption for a future influenza pandemic)。
公衆衛生対策
検疫・水際対策の在り方について
英国では、空港の閉鎖を義務付けることはしないが、WHO Phase6の段階に入り国民の間での感染拡大が起こると、空港スタッフの不在や、航空機の運行上の困難もしくは欠航のために空港業務に支障を来すことが予測される(※1 - p.28 table 2)。
集会・外出の自粛
大きな集会については、企画者や協賛者、参加者はその企画のキャンセルもしくは延期を考慮することが重要であると思われる。しかし、これに関しては科学的な根拠が欠けているため、政府がそのような制限の義務を負わせることはしない。むしろ強調すべきは、インフルエンザに罹患したものが、自宅待機するよう忠告を受けた人は他に広げないように心がけるべきである(※2 - p.39 Restriction on public gathering and public transport)。
個人防御としてのマスク着用
政府は、医療従事者に対するマスクやrespiratorの備蓄をしてある。一般に地域におけるマスク着用が自分の身を守る上で有益であると認識されているが、科学的な根拠はあまりないため、一般の国民が使うためのマスクは備蓄していない(※1 - p.37 Facemasks and respirator)。
予防投与の対象について
予防投与として抗ウイルス薬を用いて人々を感染から守ることは可能であり、感染を抑え、パンデミックへの発展を遅くすることは可能ではあるが、流行の期間全般にわたって予防投与によって国民を守るためには膨大な量の抗ウイルス薬が必要となり、さらに予防投与を続けている人は服用を中止すると通常の感染リスクに戻ることになる。一般的な予防投与は効果的もしくは実用的なresponse strategyとはいえない(※1 - p.41 The use of antiviral medicine for prophylaxis)。
学校における休業措置
休校措置は、個々の子供達の間や人々の間でウイルスが拡散していくのを防ぐという点で潜在的に有効的な手段である(※2 - p.39 School closures)。
ワクチン
ワクチンにはあらかじめ流行する株によって作られるプレパンデミックワクチンとパンデミックを引き起こした株から作られるパンデミックワクチンがある。パンデミックワクチンの製造期間を短縮する議論がなされているが、現時点では第1波での使用は現実的ではない。限られたワクチンの生産量に対して接種者の優先度を議論する必要がある(※1 - Protecting people through vaccination, p42)。

アメリカ合衆国オーストラリア連邦カナダニュージーランド

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本ウェブサイトの構築は、厚生労働科学研究補助金「新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業」(新型インフルエンザ発生時の公衆衛生対策の再構築に関する研究)の研究活動の一環として行った。

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