2020年1月にWHOがCOVID-19についてPublic Health Emergency of International Concern(PHEIC)を宣言して3年が経とうとしているが、このパンデミックの問題は複雑化し、単一の視点ではなく様々な観点から見ていかなければならないものとなっている。COVID-19のような新興感染症のリスクは文明の進化に伴い増大してきたものであり、21世紀には深刻な脅威となる可能性は1980年代後半から指摘されていた。加えて2000年代初頭のSARSの国際的流行により新興感染症への危機感が高まり、WHOでも国際保健規則の改訂が行われた。しかし実際には各国の公衆衛生基盤は脆弱なままであり、備えが不十分なままCOVID-19パンデミックが発生したのである。
このような状況下で現在、世界中でCOVID-19パンデミック前の社会に戻そうとする”Back to Normal”の動きが見られる。一方でCOVID-19パンデミックの終わりは未だ見えず、さらに今後もインフルエンザパンデミックをはじめとした新たなパンデミックが起こる可能性は高い。そのような状況下において、これまでの新興感染症に脆弱な”Normal”に戻ることは本当に正しいことなのか、考える必要がある。
2020年1月にWHOがCOVID-19についてPublic Health Emergency of International Concern
(PHEIC)を宣言して3年が経とうとしているが、パンデミックはこれからも当分継続し、まだ見ぬ障害が我々を待ち受けていると予測される。この問題は複雑化し、単一の視点ではなく様々な観点から見ていかなければならないものとなっている。
このような状況下で現在、世界中でCOVID-19パンデミック前の社会に戻そうとする”Back to Normal”の動きが見られる。一方でCOVID-19パンデミックの終わりは未だ見えず、仮にCOVID-19パンデミックが収束したとしても、インフルエンザパンデミックをはじめとした新たなパンデミックが起こる可能性は高い。そのような状況下において、これまでの新興感染症に脆弱な”Normal”に戻ることは本当に正しいことなのか、考える必要がある。
●今回のCOVID-19パンデミックを止めることができたポイント
WHO Independent Panel Report(2021年5月)では、パンデミックを回避できる措置を講じることのできた最後のポイントは2020年2月であったと述べられている。SARS-CoV-2はその特性から封じ込めが困難なウイルスではあるが、アジア各国は初期に中国から発生した株の制圧に成功した。しかし、ヨーロッパや中東、アメリカ東海岸では初期対応に絶望的なまでに失敗しており、これがパンデミックにつながった大きな要因であると考えられている。ここには、世界が協力して取り組むべき課題であるにもかかわらずそれをしてこなかったという点も反省すべき点としてある。