新型インフルエンザ対策に対するエビデンスのまとめ Review of pandemic influenza preparedness and control measures 厚生労働科学研究補助金「新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業」

水際対策

水際対策の一般的な有効性については不明なところが多いが、厳格な運用が求められる。
飛行機の機内における感染リスクについて詳細は不明である。いわゆるsuper speaderによって感染が拡大する報告もあるが、機内における空調による感染リスクの軽減に関する研究も報告されている。
水際対策について行動計画の中で言及している国の多くは、国外の複数の国での流行が認められる時期から国内で持続した流行が観察されるまでの間での実施を検討している。

目次

> 【水際対策の一般的な有効性】
> 【航空機内での感染リスク】
> 【水際対策の開始・縮小】

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1. 水際対策の一般的な有効性

Cowlingらによると、entry-screeningは地域内伝播を1‐2週間程度なら遅らせることができるかもしれないと報告した(※1)
Nishiuraらによると、島嶼国で検疫がパンデミックインフルエンザ感染者の地域流入を防ぐために必要な検疫期間は4.7日以上(有効性95%)、8.6日以上(同99%)であり、迅速検査を併用時にはそれぞれ2.6日、5.7日に短縮されるとした(※2)。また理論疫学の手法を用いて入国検査によって減らすことができる流行発生確率の全体的な減少は10%未満、流行開始の遅れ効果は半日未満であると推定した(※3)
Maloneらによると、有症者、無症状者に対して各80%、6%の検出能力があるとした場合に、米国は約50%の患者を検出出来る。スクリーニングは国際線でのパンデミックインフルエンザの到着を遅らせないが、特に出発国でのスクリーニングが偽陰性を大幅に減少させ、国内の新規症例と死亡割合の減少を期待できると報告している(※4)
Mukherjeeらによると、3時間以上のフライトでは有症者のうち40%がサーモグラフィーで検出できる。症例の4分の1は発症後に搭乗していたことから、exit- screeningの有効性も考えられたが、潜伏期間にある感染者は多数と考えられた(※5)
Bakerらによると、一つのフライトで9人が確定されたニュージーランドの事例から、インフルエンザ(H1N1)2009では到着客の症状スクリーニングは感度を中程度(咳のような1つの症状)に絞ることが必要かもしれないと報告している(※6)
島田らは、2009年4月29日〜6月24日に国内で確定診断された海外渡航歴があり、発症日情報が得られたインフルエンザ(H1N1)2009の147例について、感染性を有して入国した者は82例(55.8%)であり、うち71例は全くの無症状のまま検疫所を通過したことを示した(※7)。また神戸市においてリンク不明群の国内初確認がなされた2009年5月18日までとそれ以降の期間とで渡航歴有り症例中の検疫・停留による検出率が100%(5/5)→3.9%(6/153)と著減したことを示した(※8)
藤田らは、国内のインフルエンザ(H1N1)2009の総患者数と、空港検疫を通過し自宅発症した海外渡航癧有り患者数とは非常に強い逆相関を示したが(相関係数=-0.853, p=0.007)、検疫での診断例は少なかったことから、検疫の有効性は限局的であった可能性を示した(※9)


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本ウェブサイトの構築は、厚生労働科学研究補助金「新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業」(新型インフルエンザ発生時の公衆衛生対策の再構築に関する研究)の研究活動の一環として行った。

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