新型インフルエンザ対策に対するエビデンスのまとめ Review of pandemic influenza preparedness and control measures 厚生労働科学研究補助金「新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業」

学校における休業措置

学校閉鎖には積極的学校閉鎖と消極的学校閉鎖の2つがあげられる。
学校閉鎖の単独での施行あるいは他の公衆衛生対応との施行により地域レベルでの流行を遅らせることができることがこれまでの感染症モデルによる検討およびインフルエンザ(H1N1)2009における観察研究で示されているが、その効果はインフルエンザの流行状況に大きく影響される。
学校における休業措置を判断するための指標については知見が不十分である。

目次

> 1.学校閉鎖(School Closure)の種類
> 2.学校閉鎖はなぜ地域での感染拡大を抑えるために有効なのか
> 3.学校閉鎖に関するエビデンス
> 4.インフルエンザ(H1N1)2009について学校閉鎖をどう考えるべきか

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1.学校閉鎖(School Closure)の種類

 学校閉鎖の基本的な方法としては次の2つが挙げられる(※1)

Reactive School Closure(消極的学校閉鎖)
 これは多数の生徒や教師が休んだ時に行われる学校閉鎖あるいは学級閉鎖のことで、日本では、季節性インフルエンザの際に、欠席率がある一定の割合に達した時に学校閉鎖・学級閉鎖を行っているので、このような学校閉鎖・学級閉鎖はReactive School Closureということになる。一般にReactive School Closureでは地域への感染拡大を抑える効果はほとんどないと考えられている。

Proactive School Closure (積極的学校閉鎖)
これは地域で感染拡大が起こる前に積極的に学校閉鎖をおこなうものであり、地域の感染拡大を抑えるためにはこのような積極的な学校閉鎖が必要であると考えられている。日本の新型インフルエンザガイドライン(平成21年2月改訂版)において、都道府県で最初の感染が確認された時点で学校閉鎖を行うとしているのは、Proactive School Closureを行うことを想定している。


2.学校閉鎖はなぜ地域での感染拡大を抑えるために有効なのか

インフルエンザは季節性インフルエンザであっても新型インフルエンザであっても学校が地域全体の感染拡大に重要な役割をはたしていることが知られている(※2)。その理由として学校に通学する年齢層の子供では一般にインフルエンザの罹患率が高いこと、学校では多くの生徒同士の濃厚接触が起こる頻度が高く学校では大きな流行が起きやすいことがあげられる。この結果、インフルエンザの流行は学校を起点として地域に広がっていくことが多いとされている。そのために学校閉鎖は各国の新型インフルエンザパンデミック対策において重要な公衆衛生対応として位置づけられている。アメリカのCommunity Strategy for Pandemic Influenza Mitigation(February 2007)の中でも学校閉鎖は地域での被害軽減策(Community Mitigation)の重要な柱の一つとして位置づけられており、WHOもWHO global influenza preparedness plan(2005)の中でフェーズ4−6の段階で「考慮すべき(‘should be considered’)」対策としている。しかし、学校閉鎖の季節性インフルエンザおよび新型インフルエンザに対する効果を科学的に示しているデータは非常に限られている(※3)


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本ウェブサイトの構築は、厚生労働科学研究補助金「新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業」(新型インフルエンザ発生時の公衆衛生対策の再構築に関する研究)の研究活動の一環として行った。

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